「エセー」と「王子おうじ付きカレー」

2ヶ月毎に発行されるWiLLに掲載させて頂いている不肖遠藤の駄文である賦活コラムは、
お客様である建設会社や工務店にも手配りにて動いている。

DX(digital transformation)が当たり前のビジネスシーンに逆行して
完全なAX(analog transformation)である。

60年も昔の越中富山の薬売りと同じである。
目に止めてもらうのは窓口担当の女性や、現場作業や営業活動から足の遠のいた会長さんが多い。

先日も、そんなある会長さんより
「あんたの作文・・は内容が毎回バラバラでヘンテコリンだな。一体何を手本にして書いているのかね。」
と、とても嬉しい問いかけを頂いた。

「一番は金剛という会社の人柄を知ってもらいたいです。」
と答えた。

 

WiLL女性編集長より、“コラムを書いてみたら”と依頼があったのは10年前の病明け直後の事で、
その当時は仕事中でもリハビリ中でも薄明の霧の中に浮かんでいるようで、四六時中ボォ〜っとしていた。

このままだんだんと廃人になるのかと観念していた。
これをキッカケに無為に過ごす時間を全てコラムの研究に集中した。

まずはコラムの古典「エセー」に取り組んだ。
ミッシェル・ド・モンテーニュの大作である(岩波文庫で全6冊 2200ページに及ぶ)。
この書物を半分バカの右脳がイカれた状態で2回通読した。

16世紀に生きるフランス人の貴族にして、市長、司法官、領主として充実した人生を送りながらも、
突然、38才の時に広大なお屋敷にある書斎に籠った。

その一室にて、万巻の書物と自らの実体験によって生み出されたこの作品は、
政治、経済、哲学、自然科学、宗教、風習から性愛の技法に至るまで網羅していた。

2回目の通読でハッキリとわかった事があった。
それは俺にとっては畏師である近藤塾長の教えの言葉そのものだ。
何を言ったかではなく、誰が言ったか、だ。」
この「エセー」の内容は、エリートでリーダーでもあるモンテーニュだからこそ書ける事であり、
不肖の遠藤ごときが何かを主張しても誰からも相手にされないのだ。

俺は病を経験したからこそ、身体で感じた事を書くべきだと決めた。

 

そんな初心を思い出したこの7月に、「王子付きカレー」という女性の書いたエッセイ集との出会いがあった。
30の短編からなる作品だが、その行間からヒタヒタと誠実な人生が伝わってくるのだ。
俺の日頃の傲岸不遜(ごうがんふそん)さを強く思い知らされるのだ。
何回読んでも心に痛い、長い付き合いとなる一冊の本に出会えて、とてもうれしいのだ。

※「王子付きカレー」中川千都子著  発行:あざみエージェント 2,200円
(一般の書店の流通にはのっていません。アマゾンにて入手可能です。)



脳出血社長の賦活コラム

株式会社金剛 社長 遠藤伸一

 


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