Integration brings peace of mind
共存する余白...
それは心の森の中にある
太陽の光に照らされて
湖の中に映し出される姿
それは実際の姿を反転している
色を通して考える「統合」とは
青・赤・黄色の絵の具を均等に混ぜると、黒に近い色になります。
厳密には、プリンターのインクに使われるシアン(空色)、マゼンタ(赤紫)、イエロー(黄色)が「色の三原色」と呼ばれ、
これらを混ぜることで黒に近づきます。
プリンターではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)という表示がされており、
このどれか一色でもインクの残量が少なくなると、思い通りの色を再現することができません。
ここでは、わかりやすく青・赤・黄色と表現します。
例えば、赤と青で紫、赤と黄色でオレンジ、青と黄色で緑になります。
さらに緑(青と黄色)に赤を加えると茶色になります。
この茶色も、濃淡や色合いは分量次第。微妙な配分によって、まったく違う印象の色になるのです。
デザインの仕事をしていて思うのは、
「同じ色でも、見る日の気分で印象が変わる」
ということです。
心が穏やかな日には、優しい色合いに見え、画面越しにも柔らかさが伝わってくるように感じます。
でも別の日に同じデザインを見ると、なぜか色が濁って見える。
「優しさを表現したつもりが、ぼやけていてはっきりしないな」
と感じ、色味を変えることもあります。
そんな日は、気分が活動的で、薄いピンクが物足りなくなり、真っ赤を使いたくなるのです。
仕事として受けているものは、C・M・Yの数値を見ながら誤差が出ないように調整しますが、
自分のためのデザインではそのときの気分によって色を変えることもしばしば。
これがとても面白い現象だと思います。
子どもが描いた絵にその心の状態が表れるとよく言われますが、大人も同じ。
無意識に選んだ色や線の強さから、心の内が見えてくるのです。
もし今の自分の気持ちを知りたければ、色鉛筆でもクレヨンでも、
好きなように絵を描いてみるのも一つの方法かもしれません。
私はこれまで、青・赤・黄色を混ぜて黒をつくることを「統合」だと考えていました。
一つの色をつくるためには、すべての色を加えなければならない──そんな風に捉えていたのです。
でもそれは「すべての考え方を混ぜて一つの答えを出すことが統合」という考えに近く、ふと疑問を抱きました。
果たしてそれは本当の「統合」なのでしょうか?
人の考え方には、「右寄り・左寄り」「保守的・革新的」といった対立する軸があり、
MBTIのように「内向的・外向的」「思考型・感情型」など分類されることもあります。
でも、こうした分類は時として自分を縛ってしまう危険もあります。
なぜなら、人の心は固定されたものではなく、日々揺れ動くからです。
穏やかな日もあれば、怒りっぽくなる日もある。
冷静に判断できる日もあれば、感情に流されてしまう日もあります。
脳の機能にしても、右脳・左脳のどちらか一方が働いているわけではなく、
イメージを右脳でつかみ、左脳でそれを形にするように、常に連携しています。
人の思考も、分離ではなく協力によって成り立っているのです。
では、他人の多様な考えを一つにまとめる「統合」とはどういうことなのでしょうか?
私はあるときから、「妥協できること」「妥協できないこと」を書き出してみるようにしました。
すると、自分の中にある思考のクセや、譲れない理由が見えてくるようになりました。
例えば私の場合、
1.朝ごはんは納豆 → 妥協できる(なければ食べない)
2.味噌汁の味噌が切れてる → 妥協できる(今日は無しでOK)
3.日曜日は雑穀米を炊く → 妥協できない(娘のために譲れない)
4.レモン水の水分補給 → 妥協できない(けど忘れることもあり、実際は妥協してる)
些細なことでも、自分が何に執着しているのかが分かると、「自分はこういう人間だ」と思っていた枠が崩れていきます。
「統合」とは、すべてを混ぜて一つにするのではなく、「妥協できること」を増やすことで、
他人と共存する余白を広げていくことかもしれません。
今、日本では外国人の増加によりさまざまな問題が表面化しています。
文化や生活習慣の違い、言葉の壁、治安への不安…。
日本のマナーや奥ゆかしさが通じない場面に出会うことも多くなりました。
でも、そうした違いにストレスを感じる一方で、外国人労働者の存在がなければ成り立たない仕事も増えています。
大切なのは、「違う=悪」と決めつけるのではなく、「違いにどう向き合うか」です。
中国の思想家・孔子の「罪を憎み、人を憎まず」という言葉があります。
悪事を働いたその行為を非難することはあっても、その人の存在までは否定しない──。
この言葉の中に、今私たちが大切にすべき心の在り方があるように思います。
青には冷静さ、赤には情熱、黄色には好奇心というように、それぞれの色には固有のエネルギーがあります。
「統合」とは、それぞれの色を打ち消して混ぜ合わせるのではなく、
その個性を活かしながら、重なる部分で新しい色を生み出していくこと。
それが本当の意味での「統合」なのではないでしょうか。